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第二種の申請準備を始めた担当者が、こんな言葉を残した。「第三種のときの文書を持ってきたら、全部やり直しと言われた」。
やり直しになった文書は10種類以上。許可取得まで半年以上ずれた。問題は担当者の知識不足ではなく、第三種と第二種で何が変わるかを誰も整理していなかったことだ。これは仕組みの問題だ。
第三種から第二種へ——なぜ現場が止まるのか
第三種医療機器製造販売業(一般医療機器)で運営してきた会社が、事業拡大や新製品展開に伴い第二種(管理医療機器)へ移行するケースが増えている。
問題は、移行のタイミングで「今まで通り」が通用しなくなることだ。
第三種では比較的シンプルな体制で運用できる部分が多い。しかし第二種では、一般にQMS省令の要求範囲が広がり、文書・体制・プロセスの整備が別次元になると考えられている。
それを事前に把握しないまま申請に入る。これが多くの現場がつまずく構造的な原因だ。
第三種と第二種、QMS要件のどこが変わるのか
大まかに整理すると、次のような違いが生じると一般に考えられている。
製品の認証・承認ルート
一般医療機器(第三種)は届出のみで販売できるケースが多い。管理医療機器(第二種)は、登録認証機関による第三者認証が必要な品目が多く含まれる。この認証を受けるためのQMS文書が、第三種の延長では対応できないことが多い。
安全管理責任者の設置
第二種では安全管理責任者の設置が求められると一般に言われている。第三種では設置が不要とされる場合もあり、この役割・業務の文書化が新たに必要になる。
設計管理の適用範囲
管理医療機器では、設計管理(Design Control)が要求されるケースが増える。設計インプット・アウトプット・レビュー・バリデーションの各ステップを文書化する必要があり、第三種時代の開発記録がそのまま使えないことが多い。
リスクマネジメントの文書化
ISO 14971に基づくリスクマネジメントファイルの整備が、より明確に求められる。リスク分析・評価・コントロールの一連の記録を製品ごとに準備する必要がある。
以上はあくまで一般的な傾向だ。個別製品の分類・品目・適用規格によって要件は異なる。最終的な確認は、QMS責任者や薬事担当者が関係当局・登録認証機関に行うことを強く推奨する。
よくある整備漏れ——現場でつまずく3つのポイント
製品標準書の更新
第三種で作成した製品標準書は、管理医療機器に求められる記載事項を満たしていないことが多い。使用目的・適用規格・設計管理記録との整合性など、追記・改版が必要になるのが一般的だ。
供給者管理の文書化
外注先・部品メーカーの評価・選定・監視を文書化する仕組みが、第三種段階では形式的になっているケースがある。第二種ではより体系的な供給者管理の記録が求められると考えられる。
内部監査の実施と記録
QMS省令に基づく内部監査の実施記録が、そもそも存在しない会社も少なくない。年1回以上の監査実施と、不適合の是正処置(CAPA)の記録が求められる。
整備を怠ると現場に何が起きるか
申請段階での指摘による許可取得の遅延は、事業計画そのものを狂わせる。
製品リリースが数ヶ月ずれると、営業・開発・製造の各部門が連鎖的に影響を受ける。「文書を直してから再提出」を繰り返すたびに、現場の工数と士気が削られる。
さらに、許可取得後に調査が入った際、記録不備が見つかれば改善指示につながる可能性がある。これは担当者の能力の問題ではなく、最初にどの要件を整備すべきかを整理できていなかった仕組みの問題だ。
品質管理体制の属人化が引き起こすリスクについては[医療機器のメンテナンス属人化リスク](/medical-device-maintenance-solo-dependency-risk/)でも詳しく取り上げている。
手作業でよい場合と整備を急ぐべき場合の判断基準
まだ手作業・簡易テンプレートで対応できる段階は次の通りだ。
- 製品品目数が少なく(3品目以下程度)、設計変更が少ない
- 外注先が限定的で、供給者管理が単純
- 内部監査をこれから初めて立ち上げる段階
整備・体制構築を本格化すべき段階はここだ。
- 登録認証機関への申請が具体的なスケジュールに入った
- 品目数が増加し、製品標準書・リスクマネジメントファイルの数が増えてきた
- 複数担当者が文書を更新する運用になっている
ツールや体制の導入判断は、許可申請の6〜12ヶ月前には着手することが望ましいと一般に考えられる。
今日から動ける改善手順
Step 1: ギャップ分析を実施する
現在保有している文書リストと、第二種移行に必要な文書リストを並べる。何が「ある」「ない」「不十分」かをA3一枚に整理するだけでよい。この作業で、整備の優先順位が見えてくる。
Step 2: 安全管理責任者の役割を定義する
設置が必要な場合、誰が担うか・業務内容をどう文書化するかを確認する。形式だけの設置ではなく、実際の業務フローに組み込まれているかが後の審査で問われるポイントになる。
Step 3: 製品標準書とリスクマネジメントファイルの見直しから始める
すべての文書を一度に直すのは現実的でない。まず審査で確認される可能性が高い製品標準書とリスクマネジメントファイルから着手し、その後、設計管理・供給者管理・内部監査へ展開する。
次にやること
文書整備は「どの順番で何を直すか」が最初の難所だ。
内部で判断が難しい場合は、同種の整備経験がある専門家やコンサルタントに早期にレビューを依頼することも選択肢になる。審査機関への事前相談制度を活用している会社もある。
現場の引き継ぎや文書管理の実態については[医療機器メンテナンスの脱属人化](/medical-device-maintenance-depersonalization/)にまとめている。品質管理の属人化が品質変動を起こす構造は[品質変動と顧客対応リスク](/maintenance-quality-variation-customer-request-risk/)でも整理しているので参照してほしい。
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よくある質問
第三種の文書はそのまま第二種申請に使えますか?
一般に、第三種時代の文書を第二種申請にそのまま流用することは難しいと考えられている。特に製品標準書・設計管理記録・リスクマネジメントファイルは、管理医療機器の要件に合わせた改訂が必要になるケースが多い。個別の文書が流用可能かどうかは、QMS責任者や薬事担当者が登録認証機関に確認することを推奨する。
ISO 13485の認証取得は第二種許可に必須ですか?
ISO 13485認証自体が法律上の必須要件かどうかは、製品分類・対象市場・申請する認証の種類によって異なる。国内のQMS省令対応とISO 13485認証は要求構造が異なる部分もあるため、混同しないよう注意が必要だ。自社の状況に応じて専門家に個別に確認することが望ましい。
安全管理責任者は社内で兼任できますか?
QMS省令や関連通知に定める兼任の可否・条件は複雑であり、一概に「可能」「不可能」と断言できない。一般に、独立性の確保や業務量の観点から兼任制限が設けられているケースがあると考えられる。自社の状況を確認する際は、QMS責任者・薬事担当者が関係当局に確認することを推奨する。
内部監査は誰が実施すればよいですか?
自分が管理しているプロセスを自分で監査しないことが基本的な原則だ。内部監査員の力量確保と、監査される部門から独立した立場での実施が一般に求められると考えられる。社内に適任者がいない場合、外部の内部監査サービスや専門家を活用する選択肢もある。
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おすすめのツール・テンプレート
QMS文書管理テンプレート
製品標準書・リスクマネジメントファイル・内部監査チェックリストをゼロから作るのは時間がかかる。書式が整備されたテンプレートを起点にすることで、記載漏れを減らし、改訂の履歴管理もしやすくなる。「医療機器QMSテンプレート」「ISO 13485 文書管理」などのキーワードで専門書籍や実務向けリソースを検索すると、すぐに使えるフォーマットが見つかることが多い。
プロジェクト管理・課題追跡ツール
文書整備を複数人で進める場合、誰がどの文書を・いつまでに改訂するかを管理する仕組みが必要になる。NotionやBacklogなど、タスク管理ができるツールにQMS文書改訂タスクを登録し、担当・期限・ステータスを一元管理すると、作業の抜け漏れが減る。大がかりなシステムより、まず使えるツールで「見える化」することから始めるのが現実的だ。
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