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部品は「ない」のではない。「いつ来るかわからない」のだ
修理の依頼が入る。原因を特定する。必要な部品を確認する。
そこで止まる。
「在庫なし。メーカー発注。納期未定。」
この場面を、現場で何度繰り返しただろうか。問題は部品の欠品ではない。納期が読めないことだ。読めないから、顧客に説明できない。説明できないから、不信感が積み上がっていく。
これは担当者の段取りの問題ではない。部品の情報設計と在庫の仕組みが整っていないことが原因だ。
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よくある失敗
「納期確認中」で止まる修理
修理票に「部品発注中」と書かれたまま、1週間が過ぎる。担当者がメーカーに問い合わせるたびに「調整中」と返ってくる。顧客への連絡は後回しになり、最終的に顧客側から催促が来る。この連絡コストが、実は修理工数の中で見落とされやすい。
在庫があるのに「なし」と判断される
倉庫の棚には部品がある。しかし台帳が更新されていないため、担当者はないと思って発注してしまう。後から二重発注が発覚する。在庫管理の問題ではなく、台帳と実物の乖離が常態化していることが原因だ。
「経験」で在庫量を決めている
「この部品はよく使うから多めに持っておく」という判断が、属人的に積み上がっている。結果として、使わない部品の在庫だけが増え、本当に必要な部品が切れる。コストが膨らむ一方で、修理完了は遅れ続ける。
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なぜこの問題が起きるのか
個人が怠けているわけではない。仕組みが整っていないから起きる。
具体的には三つの原因がある。
一つ目は、リードタイムが「感覚値」で管理されていることだ。メーカーごと、品番ごとに納期は違う。しかし多くの現場では「だいたい1週間くらい」という経験則で動いている。実際の過去データと照合されることはない。
二つ目は、在庫量の根拠がないことだ。「去年これくらい使った」「万が一のために多めに」という判断が、数字ではなく感覚で行われている。安全在庫の計算式が存在しないまま、担当者の裁量に任されている。
三つ目は、発注タイミングが定義されていないことだ。「残り2個になったら発注」というルールが明文化されておらず、担当者が気づいたときに発注する。気づかなければ欠品になる。
この三つが組み合わさると、修理の遅延は構造的に発生し続ける。
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放置すると何が起きるか
修理完了が遅れると、顧客は代替機の手配を求めてくる。代替機の管理が加われば、現場の工数はさらに増える。
担当者は毎日「あの案件、部品どうなりましたか」という問い合わせ対応に追われる。本来の修理・点検業務が後回しになる。残業が増える。ベテランが退職すると、どの部品をどこから買っていたかすら引き継げない。
品質面でも影響が出る。修理待ちが長引くほど、機器の稼働状況が不明な時間が伸びる。この状態が記録に残らないと、後の[品質トレーサビリティ](/maintenance-quality-difference-machine-sound/)に空白が生じる。
コストの面では、欠品による緊急発注が割高になる。特急対応の手数料や輸送費が積み上がり、年間でみると相当な額になることがある。
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改善するための判断基準
すべての現場が同じ対応をする必要はない。現状に合わせた段階がある。
まだ手作業でよい場合:取り扱い機種が少なく、部品の種類が20点以下で、同じ担当者が長期間管理している。このケースなら、台帳を整備してリードタイムを記録するだけで改善する。
テンプレートや計算シートで十分な場合:機種が複数あり、担当者が複数いる。発注頻度が月に数回以上ある。この規模なら、安全在庫の計算ルールと発注点を定義したExcelで管理できる。
ツール導入を検討する場合:機種数が多い、担当者の入れ替わりがある、在庫場所が複数拠点にまたがる。このケースでは属人管理の限界が来ており、システムによる可視化が有効になる。
自社の規模と現状を照らして、まずどの段階かを確認するところから始めるといい。
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今日できる改善手順
Step 1:主要部品のリードタイムを記録する
過去の発注履歴を3〜6ヶ月分引き出す。品番ごとに「発注日」と「入庫日」を並べる。差分がリードタイムだ。これを平均と最大値で整理する。「だいたい1週間」が「最短3日・最長18日」に変わった瞬間、初めて議論の土台ができる。
Step 2:安全在庫の計算ルールを定義する
安全在庫の基本式は「安全係数 × リードタイムの標準偏差 × 平均需要量の平方根」だ。精緻な計算が難しければ、まず「最大リードタイム-平均リードタイム」の間に消費される量を安全在庫として設定する簡易版から始める。重要なのは根拠のある数字を持つことだ。
Step 3:発注点を品番ごとに明文化する
「残り何個になったら発注する」を台帳に書く。担当者が変わっても、誰でも同じ判断ができる状態を作る。これだけで、欠品による緊急発注の頻度が下がり始める。
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おすすめの次アクション
まず自社の「よく使う部品トップ10」のリードタイムを集計してみてほしい。10品番でいい。データが出てくると、どこから手をつけるべきかが見えてくる。
在庫の属人化がすでに進んでいるなら、[担当者依存のリスク](/medical-device-maintenance-solo-dependency-risk/)について整理した記事も参考になる。修理の担当者が変わったときに情報が引き継げない問題は、在庫管理と同じ構造から生まれている。
また、在庫の最適化と並行して[修理業務の属人化解消](/medical-device-maintenance-depersonalization/)を進めると、改善のスピードが上がる。在庫が整備されても、使う人が変わるたびにルールが崩れては意味がない。
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よくある質問
安全在庫はどのくらいの頻度で見直せばいいか
一般的には半年に一度の見直しを設けるケースが多い。ただし機器の使用頻度や取扱い機種の変更があったタイミングで都度確認することが望ましい。年間を通じて需要が一定でない場合は、季節変動を考慮した設定が有効なこともある。最終的な見直し頻度はQMS責任者や在庫管理の担当責任者が判断する必要がある。
部品の種類が多すぎて管理できない
全品番を一度に整備しようとすると止まる。「修理頻度が高い機種」かつ「リードタイムが長い部品」に絞るのが現実的だ。パレート分析で上位2割の品番を特定し、そこから着手する。残りは実績が積まれてから順次追加する。
メーカーからの納期回答が毎回あいまいで困っている
「納期未定」という回答が続く場合、過去データからメーカーごとの実績リードタイムを自社で集計しておくことが有効だ。回答に頼らず自社の実績値を使って在庫設計すると、依存を減らせる。また複数サプライヤーを持てる部品については代替調達先を確保しておくことを検討する価値がある。
在庫を増やすとコストが上がるのでは
安全在庫を持つコストと、欠品による緊急発注・修理遅延・顧客対応コストを比較することが重要だ。多くの場合、緊急対応のトータルコストの方が高い。ただし根拠のない「多め在庫」はコストを押し上げるだけなので、計算に基づいた在庫量の設定が前提になる。[修理遅延が品質に与える影響](/maintenance-quality-variation-customer-request-risk/)と合わせて判断すると整理しやすい。
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ツール紹介
在庫・発注管理に使えるクラウドツール
部品点数が増えてきたタイミングでExcel管理の限界が来る。クラウド型の在庫管理ツールは、複数拠点・複数担当者での在庫共有と発注履歴の記録が可能だ。発注点アラートや入出庫履歴の自動記録ができるものを選ぶと、台帳との乖離が起きにくくなる。導入前に「リードタイムの記録ができるか」「品番ごとの発注点設定ができるか」の二点を確認しておくといい。
修理・保全記録と在庫を連携できるシステム
修理記録と部品の使用履歴が別々のツールで管理されていると、需要予測の精度が上がらない。修理履歴から部品の使用頻度を集計できる仕組みがあると、安全在庫の見直しに使えるデータが自然に蓄積される。メンテナンス管理システム(CMMS)と呼ばれるカテゴリのツールがこの用途に対応していることが多い。自社の現場規模と照合しながら、まず無料トライアルで確認することをすすめる。
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