「ちゃんとできているかどうかは、分かる人が見れば分かる」

修理品の最終確認を、ベテラン1人の目に任せている現場は少なくありません。その人が見て「よし」と言えば出荷、首をかしげれば手直し。長年それで問題が起きていないなら、変える理由はないように見えます。
ただ、その仕組みは「その人がいる間だけ」成り立っています。この記事では、修理品質を感覚で管理し続けることのリスクと、判断を数値と基準に置き換える手順を整理します。
感覚で回っている現場の典型
次のどれかに心当たりがあれば、修理品質の判断が人に依存しています。
- 最終確認者が休むと、修理品の出荷が止まる
- 「なぜ手直しなのか」を確認者がうまく言葉にできない
- 同じ不具合でも、担当者によって修理の範囲が違う
- 顧客から指名で依頼が来る担当者がいる
どれも、その現場の技術力が高い証拠でもあります。問題は技術力ではなく、その技術が組織の記録として残っていないことです。
感覚頼りが抱える3つのリスク
1. 判断が説明できない
監査や顧客からの問い合わせで「この修理品をなぜ合格としたのか」と聞かれたとき、記録に残っているのが「確認済み」のサインだけでは説明になりません。判断の根拠が人の頭の中にある限り、組織として品質を証明できません。
2. 担当者が変わると品質が変わる
ベテランが異動や退職をすると、合格の基準がその人と一緒に消えます。後任者は自分の感覚で判断するしかなく、品質は人によってばらつき始めます。顧客がそのばらつきに気づくのは、たいてい不具合が出たあとです。
3. 改善の手がかりが残らない
数値が記録されていなければ、「最近、手直しが増えていないか」「どの部品で問題が多いか」を後から振り返れません。感覚の判断は、その場では正しくても、次の改善につながるデータを残しません。
判断を数値と基準に置き換える手順
手順1:確認者に「何を見ているか」を話してもらう
いきなり基準書を作るのではなく、まず最終確認者の作業に立ち会い、何をどの順番で見ているかを書き出します。「音を聞く」「動かしたときの引っかかりを確かめる」「外観の傷を見る」など、本人が無意識にやっている確認項目が出てきます。
手順2:項目ごとに「測れるもの」と「見本で決めるもの」に分ける
書き出した項目を2つに分けます。
| 種類 | 例 | 基準の決め方 |
|---|---|---|
| 測れるもの | 動作時間、電圧、トルク、寸法 | 数値の範囲を決める |
| 測りにくいもの | 外観の傷、異音、動きの滑らかさ | 合格と不合格の見本(写真・音声・実物)を用意する |
測りにくいものを無理に数値にする必要はありません。合格と不合格の境目を示す見本があれば、判断は大きく揃います。外観の基準づくりは、外観検査の合否判定を画像サンプルとデジタル基準書で標準化するで詳しく扱っています。
手順3:記録様式に「判断の根拠」を書く欄を作る
チェック欄だけの記録表を、測定値や見本との比較結果を書ける形に変えます。「確認済み」ではなく、「動作時間○秒(基準○〜○秒)」と残れば、後から誰でも判断を追えます。
手順4:ベテランと後任で同じ修理品を判定し、結果を比べる
基準ができたら、同じ修理品をベテランと後任者がそれぞれ判定します。結果が食い違った項目は、基準の書き方が曖昧なところです。そこを直す作業を何回か繰り返すと、基準が現場で使える形に育ちます。
基準づくりを進めるときの注意
修理の内容や判定基準は、製品の製造販売業者が定める保守点検や修理の要件に沿っている必要があります。自社の判断で基準を緩めることはせず、取扱説明書や製造販売業者からの情報と照らし合わせながら進めてください。
次にやること
- 最終確認の作業に1回立ち会い、確認項目を書き出す
- 項目を「測れるもの」「見本で決めるもの」に分ける
- 修理記録の様式に、判断の根拠を書く欄を1つ追加する
ベテランの感覚は、否定するものではなく、組織に移すものです。言葉と数値と見本に置き換えたとき、その技術は初めて次の世代に残ります。


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