市販後安全管理(PMS)の年間計画をQMSに組み込む——PSUR作成・定期リスク評価の実務設計

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冷蔵庫を整理するとき、賞味期限が近いものから手帳にメモしておけば、次に同じ食材を無駄にしない。

そんな「記録して次に活かす」という当たり前の行動が、医療機器の市販後安全管理(PMS)の現場では年1回のPSUR作成時にしか行われていないことがある。

年間計画をQMSに組み込み、PSUR作成と定期リスク評価をいつ・どう回すかを先に決めておけるかどうかが、最初に確かめたい判断ポイントになる。

よくある失敗(仮想例)

以下はいずれも仮想例として一般化したものです。

仮想例1:PSURの作成を「期限が近づいたら始める」運用にしていた中小メーカー。前年のクレーム記録とフィールドデータを引っ張り出すだけで数日かかり、記載内容は前年のコピーに近い状態になった。

仮想例2:定期リスク評価を「担当者の気づき」に依存させていた現場。新しい不具合傾向があっても、次のリスクマネジメントファイル更新のタイミングまで反映されなかった。

仮想例3:PMSデータとCAPA(是正予防処置)が別の台帳で管理されていた組織。PSURに書くべき傾向分析とCAPAの進捗が噛み合わず、監査前に慌てて整合性を取る作業が発生した。

なぜその問題が起きるのか(仮説)

これらの失敗は、担当者の意識の問題というより、仕組み・情報設計・運用の候補として整理できる場合が多いと考えられます。

  • PMS業務が「PSUR作成」という単発タスクとして扱われ、年間のデータ収集計画と紐づいていない候補
  • フィールドデータ(修理記録、クレーム、問い合わせ)の集計頻度が決まっておらず、PSUR作成時に一括処理になっている候補
  • PMSの気づきをCAPAに渡す経路が明文化されておらず、個人の判断でつながれている候補

どれが実際の原因かは、組織ごとのQMS文書と運用記録を確認しないと判断できません。この記事では候補として示すだけにとどめます。

放置すると何が起きるか

年間計画なしでPMSを回し続けると、いくつかの影響が積み重なると考えられます。

PSUR作成の直前に作業が集中するため、記載内容の精度よりも「期限に間に合わせる」ことが優先されやすくなります。

担当者が変わった際の引き継ぎも難しくなります。年間を通じた記録がなければ、後任者は過去の判断根拠を追いにくくなります。

顧客対応の面でも、フィールドで起きている傾向を早期に拾えないと、同種の問い合わせや修理依頼が増えてから対応することになりかねません。この傾向は機械音の違いから見える保守品質の差のような、現場の小さな変化を見逃すリスクとも重なります。

改善するための判断基準

すべてをシステム化する必要はありません。まずは現状に合う範囲を判断する基準を持つことが実務的だと考えられます。

まだ手作業でよい場合:取扱製品数が少なく、フィールドデータの件数も月数件程度で、担当者が一人で全体を把握できている場合。

テンプレで十分な場合:PSURの記載項目とデータ収集のタイミングが毎年似ているが、記録フォーマットが統一されていないために毎回ゼロから作っている場合。

ツール導入を考える場合:複数製品・複数拠点でフィールドデータが分散しており、CAPAとの連動や期限管理を人手で追うのが限界に近づいている場合。

どの段階にあるかの最終判断は、QMS責任者や品質保証部門の責任者が確認する前提で進めるのが妥当です。

今日できる改善手順

Step 1:PSUR作成のタイミングを年間計画に落とす

製品のリスククラスや販売状況に応じて、PSURをいつ作成するかを一般的な目安として洗い出します。頻度の設定自体は規制要件との整合を要するため、最終的な判断はQMS責任者の確認を前提にします。

Step 2:フィールドデータの定期集計日を決める

月次・四半期など、一定周期でクレーム・修理記録・問い合わせを集計する日をカレンダーに固定します。集計の粒度が揺れると担当者ごとの対応差が残業の引き継ぎ負担につながるケースもあるため、集計フォーマットもあわせて統一しておくと扱いやすくなります。

Step 3:PMSの気づきをCAPAに渡す経路を一本化する

PMSで見つかった傾向をどのフォームでCAPA側に渡すか、誰が受け取るかを文書化します。経路が明文化されていないと、顧客対応の違いがそのままリスクとして積み重なる状態になりやすいと考えられます。

おすすめの次アクション

年間計画をゼロから作るのではなく、既存のPSURフォーマットとリスクマネジメントファイルを並べて、重複している作業と抜けている作業を洗い出すところから始めるのが現実的です。

一人の担当者にPMS業務が集中している組織は、特定の人に依存した保守体制のリスクも同時に点検しておくとよいでしょう。属人化が進むと、業務の脱属人化自体が次の課題になります。

テンプレートや比較記事で全体像をつかんだあとに、ツール導入の検討に進む順番がムダを減らしやすいと考えられます。

よくある質問

Q1. PSURはどのくらいの頻度で作成すればよいですか

製品のリスククラスや規制要件によって目安が異なるため、一般的な周期はあっても確定的な回答はできません。最終的な頻度は薬事・品質責任者が規制要件を確認して判断する前提になります。

Q2. PSURに必ず記載すべき項目はありますか

フィールドデータの傾向、クレーム・不具合の集計結果、CAPAの状況などが一般的に扱われる項目と考えられますが、記載要件の確認は組織のQMS文書と責任者の判断に委ねる必要があります。

Q3. 定期リスク評価とPSUR作成は同じタイミングで行うべきですか

同じタイミングで行う組織もありますが、必須ではないと考えられます。データ収集の周期とリスク評価の周期がずれている場合、どちらを基準にするかはQMS責任者の判断が必要です。

Q4. 中小企業でもPMSの年間計画は必要ですか

取扱製品数や件数が少なくても、年間を通じた記録がないと引き継ぎや傾向把握が難しくなる候補があります。規模に応じた簡易な計画表から始める組織もあるようです。

PMS運用を支えるツール・テンプレート

PSUR作成やフィールドデータ集計を手作業で続けると、担当者の負担が年々増えていきます。以下のようなツール・サービスは、記録の一本化や集計作業の効率化を検討する際の選択肢になり得ます。導入の適否は自社のQMS構造に合わせて確認してください。

品質記録・文書管理システム

クレームやフィールドデータ、CAPAの記録を一元管理できるQMS向けの文書管理システムは、PSUR作成時のデータ集計作業を減らす候補になります。導入前にはトレーサビリティや承認フローが既存のQMS手順と合うかを確認しておくと扱いやすくなります。

表計算・BIツールによる定期集計テンプレート

大がかりなシステムを入れる前段階として、表計算ソフトやBIツールでフィールドデータの定期集計テンプレートを組む方法もあります。小規模な組織では、まずこの段階で運用を固めてから次のツール導入を検討する進め方が無理のない選択になると考えられます。

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