GQP手順書をゼロから整備する——製造販売業者が最初に揃えるべき文書体系と記載ポイント

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「とりあえずひな形をコピーした」手順書は、監査の日に崩れる。

私が見てきた第三種医療機器製造販売業の現場では、GQP手順書を作るときにまず「他社のフォーマットを探す」ところから始まることが多い。

コピーしたひな形に自社の組織図だけ当てはめて、内容はほぼそのまま。

品質保証責任者の名前を入れ替えて、なんとなく体裁を整えて終わる。

これは担当者の怠慢ではない。文書体系そのものを最初に設計していないから、あとから矛盾が出る仕組みの問題だ。

よくある失敗

一番多いのは、出荷判定の手順書と品質情報処理の手順書で、責任者の権限範囲がずれているケースだ。

出荷判定の手順書には「品質保証責任者が判定する」と書いてあるのに、品質情報処理の手順書では「総括製造販売責任者が最終判断する」となっている。

読み合わせをすると、誰が最終的に止める権限を持つのかが文書ごとに違う。

もう一つは、変更管理の手順書が存在するのに、実際の変更はメールと口頭で処理されているケースだ。

手順書には手順が書いてあるのに、現場の実態は別のところで動いている。

教育訓練の記録も同様で、様式は用意してあるが、実際に誰がいつ何を教育したのか、記録を見ても再現できないことが多い。

なぜその問題が起きるのか

これは個人の能力や意識の問題ではない。

文書体系を「省令の条文順」ではなく「業務の流れ」で設計していないから起きる。

GQP省令は、総括製造販売責任者の業務、品質保証責任者の業務、市場への出荷の管理、品質情報及び品質不良等の処理、回収処理、変更管理、教育訓練など、複数の要素で構成されている。

これらを一つずつ独立した文書として作ると、責任者の権限や記録様式がバラバラになりやすい。

つまり、文書を作る順番と粒度を最初に決めていないことが、あとからの矛盾を生む構造的な原因だ。

小規模な組織ほど、この設計を後回しにして「必要になった文書から作る」という進め方をしがちで、結果として全体の整合性が取れなくなる。

放置すると何が起きるか

権限が曖昧なまま運用が続くと、品質情報が入ってきたときに、誰が判断するのか現場で毎回確認することになる。

「これは品質保証責任者マターですか、総括の判断が要りますか」というやり取りが、毎回発生する。

この確認作業自体が、目に見えない残業と業務の停滞を生む。

さらに担当者が異動や退職をしたとき、文書に書かれていない暗黙の運用ルールが引き継がれず、業務が止まる。

監査や立入検査の場面では、手順書と実態の不一致が指摘対象になりやすく、是正に追われることになる。

これは特定の担当者の力量の問題ではなく、仕組みが引き継ぎに耐えられる形になっていないという点で、医療機器メンテナンスの属人化や一人担当依存のリスクと根は同じだ。

改善するための判断基準

すべてをシステム化する必要はない。

記録の発生頻度が少なく、関係者が数名で完結する業務は、紙やExcelの手作業運用で十分なことが多い。

一方で、複数部門をまたぐ業務、たとえば品質情報の受付から是正措置の完了までを追跡する業務は、様式とテンプレートを整えるだけでも運用の質が大きく変わる。

さらに、回収処理のように緊急性が高く、関係者への同時展開が必要な業務は、記録の抜け漏れが重大な結果につながりやすいため、専用のツールや管理システムの導入を検討する価値がある。

判断基準は「関係者の数」「発生頻度」「抜け漏れが起きたときの影響の大きさ」の三つで考えると迷いにくい。

今日できる改善手順

Step 1として、現在ある手順書を業務の流れで並べ直す。

条文順ではなく、品質情報が入ってから出荷判定に至るまでの実際の業務フローに沿って一覧化する。

Step 2として、各手順書に登場する責任者の権限を一枚の表にまとめる。

総括製造販売責任者、品質保証責任者、文書管理担当者がそれぞれ何を承認し、何を実行するのかを横並びで確認すると、矛盾はすぐに見つかる。

Step 3として、矛盾が見つかった箇所から優先的に改訂する。

全文書を一度に作り直そうとせず、出荷判定と品質情報処理という、事故につながりやすい二つの手順書から着手するのが現実的だ。

おすすめの次アクション

文書体系を整えたあとは、記載内容の粒度をそろえる作業に入る。

このとき、他部門の運用差が原因で記載がぶれることもあるため、現場ごとの品質差が生む顧客対応リスクや、属人化が残業を生む構造についても合わせて確認しておくと、手順書の設計精度が上がる。

テンプレートを一から作る余力がない場合は、業種別のGQP文書テンプレート集を参考にしつつ、自社の組織規模に合わせて権限表を作り直す進め方が現実的だ。

よくある質問

Q1. GQP手順書は何種類必要ですか

一般に、総括製造販売責任者の業務手順、品質保証責任者の業務手順、市場への出荷の管理、品質情報及び品質不良等の処理、回収処理、変更管理、教育訓練に関する手順書が中心になると考えられる。

具体的な要否や範囲は、自社の品質保証部門の責任者と相談して確定する必要がある。

Q2. 第三種医療機器製造販売業でも同じ文書体系が必要ですか

取り扱う品目のリスク区分によって、求められる手順の詳細度は変わり得ると考えられる。

小規模な組織でも文書自体は必要になる場合が多いため、まずは自社の品質保証責任者に確認することが望ましい。

Q3. 手順書はどの部署が作成すべきですか

品質保証部門が主体となって作成し、関連部門がレビューする体制が一般的だと考えられる。

最終的な承認権限は組織の規程に従い、総括製造販売責任者が確認する形が多い。

Q4. 手順書のフォーマットは自由に決めてよいですか

書式そのものに厳密な指定はないと考えられるが、記載すべき項目や整合性については確認が必要だ。

自社のQMS文書体系全体との整合性を、品質保証責任者と一緒に確認しながら決めるのが安全だ。

ツール紹介

文書体系の骨格ができたら、記載作業を効率化する道具を検討する段階に入る。

以下は、GQP文書の整備を進めるうえで参考になりやすい選択肢だ。

QMS文書テンプレート集

業務フロー別に整理されたひな形を使うと、条文順で作って矛盾が生まれる失敗を避けやすい。

自社の組織規模に合わせて項目を取捨選択できるものを選ぶと、無駄な作り込みを減らせる。

文書管理・改訂履歴管理ツール

紙やExcelでの版管理が限界に近づいている組織では、改訂履歴と承認フローを一元管理できるツールの導入が有効だ。

特に複数部門が関わる変更管理や品質情報処理では、抜け漏れの防止につながりやすい。

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